「アレはないから買えないから誰も使えない世界」はいつか「ただアレがない世界」になる


CHAGE AND ASKA のASKA が覚せい剤所持及び使用の疑いで逮捕されました。

僕の世代では、ASKA を知らない人を探す方が難しいくらいの有名人ですし、好き嫌いは別にして、これまでにその楽曲を一度も聞いたことがないという人も、ほとんどいないでしょう。それくらいの有名人が覚せい剤で逮捕されたのだから、衝撃を受けた人も多いと思います。当然、僕もその一人です。

僕自身は、CHAGE AND ASKA の曲が好きというわけでもなく、どちらかといえば苦手な方でした。でも、今回はたまたまそういう人が逮捕されたというだけで、もしかしたら、僕が好きな俳優や歌手の人でも、同じ過ちを犯している人はいるかもしれない。そういう意味では、外野から興味本位で騒ぎ立てるようなことでもないと思います。

問題の本質は、一時代を築いた大物ミュージシャンが覚せい剤をやっていた、ということではなく、覚せい剤をやっている人がいる、という点にあるんじゃないでしょうか。今回の一件もそうですが、著名人が違法薬物で逮捕された場合、報道の多くはその著名人の栄光と挫折、転落の過程を掘り下げていくのがマスコミのセオリーです。「あの ASAKA がこんなひどい有様になっていた」ということを突き詰め、あらゆる角度からスポットを当てて話題を繋ごうとする。

そんなことよりも、もっと根源的に、覚せい剤を売っている人間にクローズアップして叩いていったらどうなのかと。今回の報道の中にも、「ASKA に薬を売ったことがある売人とコンタクトに成功。ASKA はボロボロだった」みたいな記事が散見していて、それらを見かけるたびに疑問を感じます。なぜ、そのコンタクトに成功した相手を逮捕させないのかと。

僕は、自分の意識を失うというのが嫌いで、違法薬物はおろか、アルコールで酔っぱらうことさえイヤです。けれど、酔っぱらったりラリったりすることの快感は想像できるし、納得もできます。覚せい剤で逮捕された著名人を「あいつも堕ちた」と叩くことは簡単ですが、人が覚せい剤で狂うのは当たり前のことで、もし僕が誰かに拉致され、強制的に覚せい剤を使われ続けていたら、あれほど意識を失いたくないと言っていた僕も、簡単に中毒者になることでしょう。自分の意志で薬に手を出すのとは違うと思うかもしれませんが、誰だって自分の意志の強弱に無関係に、運の悪さだけが原因で廃人になってしまう可能性もあるはずです。

どうして覚せい剤などの事件が後を絶たないのかといえば、それを商品として売っている人なり組織があるからで、そちらの撲滅に全力を注ぐのが、正しい解決への道筋だと思うのです。今回の事件の中で、警察関係者のコメントとして、「これを機に芸能界の薬物汚染を根絶したい。大物芸能人もどんどん検挙したい」といったものもありました。警察関係者といっても、どこまでの関係者なのかはわかりませんけど、違和感を感じまくる発言です。何人の大物芸能人を逮捕しようが、売人が存在する限り同じこと。「買う人がいなくなれば売る人もいなくなる」という理屈は通じないと思います。ニワトリと卵のパラドックスではなく、覚せい剤等に関しては間違いなく、「売るやつがいるから買うやつがいる」んです。商品があるからいけない。

前述の警察関係者のように大物芸能人に触手を伸ばして芸能界に警告を与えることも、しょせんは対症療法であり、根本の原因を解決するには至りません。「逮捕されるからやめよう」という考え方の人が増えても意味がないんです。それはつまり、「逮捕されないならやりたい」という人の存在を残すことであり、結局みんな「これなら大丈夫だろう」の誘惑に負けるわけです。「バレたら怖いから絶対浮気しない」と言い切る恋人に、全幅の信頼と好意は寄せられませんよね。

ASKA を逮捕できたということは、売った人間の特定だってできているに違いない。そっちこそ逮捕して電波に晒し、なぜその人間がそんな愚行に走ったのかを過去にさかのぼって掘り下げて報道して見せしめにしてやればいい。組織の末端を捕まえてもとかげのしっぽ切りで、本当の悪人は逮捕できないというむきもあるかもしれませんが、果たして本当にそうでしょうか。全国の警察が把握しているだけでも、100人はくだらない数の違法薬物販売者はいるはずです。かたっぱしから逮捕してどんどん死刑にしてしまえと、やや乱暴でもそう思ってしまいますね。本気で覚せい剤を取り締まりたいのなら。

自動車のスピード違反て、僕も2回ほど捕まったことがあります。あれも、本気で制限速度を守らせたいのかわかりませんよね。制限速度内だけで走っている車の方が圧倒的に少ない。本気になればいくらでも検挙することができる。それでもそうしないのは、速度違反車両を本気で根絶やしにしようなんて思っていないからです。危険な運転をする車を減らし、交通事故を減らし、ついでに自分のポイントも稼ぎ、そういった旗印の下に行われているのがあの取り締まりで、まさか警察の人も、日本国内すべての車が制限速度を守るようになるなんて考えてもいないはず。

覚せい剤をそれと同じにしてはいけないと思うんですよ。警鐘を鳴らして芸能界の汚染を減らせればいいってことではない。覚せい剤というものの存在を撲滅することが肝要で、本腰を入れて取り組むべきことです。それができないのなら、いそ合法にしちゃえばいいじゃんとさえ思います。誤解しないでいただきたいのですが、覚せい剤を合法にしたいのではなく、あくまでもこの世から根絶させたいと願うのが僕の意志です。

どこかお偉方の間の利害関係も影響して、存在が確実にわかっていてやっていることも把握されている社会悪の集団を一斉に検挙することができないんでしょうね。だからいつまでも、泣くのは弱者であり、庶民なわけです。

田代まさしが薬物で逮捕されたことを知っている人はたくさんいる。酒井法子も、槇原敬之も長渕剛も押尾学も研ナオコも美川憲一もその他いくらでも、思いつくままに挙げてもキリがないくらいの数の有名人が逮捕され、その事実を僕らは知っていますが、彼らに薬を売った組織なり人間の名前となるとまるでわからない、記憶にない。著名人の方が話題になるのはわかる。でも、買って使ったやつを叩いても意味がないと思います。製造したり販売している方を晒すべきでしょう。

自ら覚せい剤を使用することは犯罪であり、軽蔑に値するバカな行為ですが、覚せい剤を使用してラリってしまう反応そのものは至極当然のことです。使ったことがバカなのであり、その結果だれといつどこで乱交したとかしないとか、そんなことはもうどうでもいいことです。掘り下げていくようなことじゃない。そっちに回す労力があるなら、販売サイドを全力で叩き潰してほしいものです。

覚せい剤の事件に限らず、日本における犯罪報道や捜査の在り方は、何事にも「人権」を主張し、一部の人間の思惑や利害に顔色を伺い、歪な形になっている気がしてなりません。「覚せい剤売ったよね?死刑ね」だとなぜいけないのか教えてほしい。情の絡んだ殺人より遥かに同情の余地がないことに思えるのですが。

[ 2014/05/30 17:49 ] 雑記雑文 | TB(0) | CM(0)